※2~5年後設定
初めてその日、沖田は身に恐怖を感じた。死を迎合する己の魂。刀を握っている間は一生自分には訪れないものだと思っていた。だが、今回ダメージを受けたのはその肉体だけではない。
かねてから追っていた組織の船へと乗り込んだは良いが、謎の煙に包まれ、気づけば目の前にいる大男が万事屋の神楽へとすり替わっていたのだ。
これが《まやかし》であることは分かっているのだが、足がすくむ。太刀を振るえないのだ。沖田はこの絶体絶命的状況に目を閉じ笑った。
いつからあの女に躊躇うようになったのか…………
神楽相手にいつだって沖田は本気で掴みかかっていた。神楽とぶつかる事に手加減したことなど一度もない。それなのに何を躊躇うのか。それにもし神楽がこの状況を見れば言うはずだ。
『ビビらず斬れヨ! チンピラチワワ!』
沖田は目を開けるとふらつく体をどうにか壁で支えると――――――刀を捨てた。その代わりぐっと姿勢を低くし、腹に一撃加えたのだった。どさりと言う音と共に目の前の神楽が倒れる。それと同時に煙によって神経を麻痺させられた沖田も沈んでしまうのだった。
やはり斬れなかった。それが己の命を死に晒すことだったとしても、沖田には斬れなかった。その理由は簡単だ。愛を知ってしまったからである。
こんなことならば知らなければ良かった。そう思っているも、女を……神楽を愛したことに後悔はしていない。
俺の葬式であいつ、泣くんだろうか…………
そんな事を考えているとふと気が付いた。自分が死んでいないことに。重い体ではあるが薄っすらを目を開くと、見慣れた木目の天井がぼんやりと映った。そして、襖の向こうから聞こえる澄んだ女の声と……近藤の声が聞こえた。
「ああ、怪我は大したことねぇんだが、神経を麻痺させる煙を吸っちまってな、当分起きることはないだろう」
「…………そうアルカ。呑気に夢見てるだけで安心したアル。連絡してくれて助かったネ」
神楽の声だ。沖田はゆっくりと布団から体を起こそうとして…………あまり力が入らず、半身を起こすだけでやっとだ。まだ麻痺が少し残っているらしい。それでも意識ははっきりとし、視界も問題なく見え始めた。
「じゃあ、俺は現場の後処理に向かわなきゃならねぇ、ここも殆ど空きになる。チャイナ娘、悪いが総悟を頼んだぞ」
「おうネ、任せるアル! ちゃんとトドメ刺しとくネ!」
沖田は神楽の声に思わずニヤけると、今から二人きりになれる事を知ったのだった。
襖が開けられて、やけに短い丈のチャイナドレスを着た神楽が沖田を見下ろした。不安そうであったその顔は一気に険しいものになり、勢い良く襖を閉めたのだった。
「なにニヤついてるアルカ! 全然元気そうアルナ!」
「まァ、そう言うな。それとも照れてんのか?」
神楽は不謹慎だと言わんばかりの表情をすると沖田の隣に正座した。そして、半身を起こしている沖田に飛びついたのだった。
「お前、一人で突っ込んで行ったダロ! 死んだらどーするつもりネ! 死ねヨ! バカ!」
沖田は神楽を支える力もなく、布団に寝転がってしまうと神楽が驚いて顔を見つめてきた。
「ほ、本当にお前……ダメになっちゃったアルカ?」
「ダメってなんでィ。なんか腹立つ言い方だな」
「でも、お前の体、全然動かんアル。ほら、これ分かるネ?」
そう言って神楽は沖田の頬をぶん殴ると、沖田はさすがに薄笑いを浮かべた。
「テメーそうやって旦那とのストレス発散に俺を使ってるだろ」
「はぁ? そんなストレスは眼鏡ぶん殴って発散してるから問題ないネ」
神楽は倒れてしまった沖田の体に布団をかけると、優しく頭を撫でた。神楽の温かい手が髪の上を滑る。沖田はそんなことに気持ちが落ち着くと、こちらを見下ろす瞳を見つめた。
「またテメーのその生意気な面が拝めて、よかった」
すると神楽の顔がみるみる内に赤く染まり、瞬きを激しく繰り返した。
「な、なに言ってるアルカ。お前、頭までやられたネ…………」
その反応が面白くて沖田はゆっくり片手を伸ばすと、神楽の頬に手を添えた。
「その面、もっと近くで見せろ」
「…………ばかっ」
神楽がそう言ってゆっくり沖田に顔を近づけると、二人の鼻先が擦れてくすぐったさを覚えた。だが、沖田の目的はそれではない。近づいた神楽の後頭部を押さえると、自分の唇へと押さえこんでしまったのだ。
短い口付けが終わりゆっくり離れると、すっかり色気づいた神楽の顔が見えた。
「……今日はお前に何でもしてやるつもりで来たネ」
その言葉に沖田は珍しく微笑んだ。側に居てくれるだけで十分だと、そんなふうに思ったのだ。心の安らぎを与えてくれれば…………神楽が間違いなく側に居てくれれば十分であると。
「なら、昔話でも読み聞かせてもらうかねィ。桃尻太郎が 鬼ヶ島に×××しに行く話でも」
神楽は沖田の額を軽く小突くと、立ち上がってどこかへ行ってしまった。
怒らせてしまったのかと焦った沖田だったが、すぐに神楽は戻って来た。水の張った桶とタオルを携えて。
「病院でも清拭してもらったみたいだけど、また汗掻いたダロ? 拭いてやるネ」
そう言った神楽に沖田は布団を捲られると、着ている浴衣を脱がされた。
「ま、待て。良いって。どうせ夜には風呂に入れるんだ」
「お前、麻痺してて気付いてないアルカ? 足、けっこー血出てたって……」
僅かに頭を上げて見てみると、確かに足には痛々しく包帯が巻かれていた。どうりで立ち上がれない筈だ。
「でも骨には異常ねぇんだろ?」
「なくても傷はあるネ! 治るまで私が体拭いてやるから、風呂場を血の海にだけはするなヨ!」
はいはい、と沖田は適当に返事をするも内心は、神楽がこうして毎日通ってくれることに喜んでいた。恋人とは言え、会えるのは月に数回だけなのだ。怪我の功名とはまさにこれだと思っていた。
「ほら、ゆっくり体起こすアル」
神楽に支えられ大きく体を起こした沖田は、布団の上に座らされた。神楽が固く絞ったタオルで沖田の首や背中、肩と順番に拭いていく。そんな真剣な神楽の横顔を見ているとつい悪さをしてやりたくなる。しかし、手をついて体を支えるだけで今はやっとだと、沖田は大人しく神楽に体を拭かれているのだった。
「こんなところにも傷がアルネ……ここも…………」
そう言った神楽の白い指が沖田の傷跡をなぞると、ゾクゾクと堪らない気持ちになった。だが、今はそんなことをしている場合ではない。大人しく寝ているに限るのだ。
しかし、気分は人知れず盛り上がっていく。
「今、一体何時だ?」
「もうすぐ夜の八時アル」
暗いとは思っていたのだが、あれから実に十二時間以上経っているとはとても信じられなかった。
「折角テメーの体をどうにでもして良いって、近藤さんから時間もらったってのにな……」
「ゴリ、一言もそんなこと言ってなかったダロ!」
しかし、タオルを持っている手を休めると、神楽は何かを考えるような顔つきになった。
「でも、お前には早く元気になってもらいたいのは本当ネ。こんな傷あちこちに作って……もうちょっと神楽ちゃんのものなんだから大事にしろヨナ、その体」
そう言って神楽は沖田の肩にある傷跡に唇を寄せた。そして、小さく啄むと――――――沖田の体は一気に元気になってしまった。だが、どうにもこうにも体は動かせない。もどかしさと苛立ちが押し寄せてくる。
すると、神楽はニヤリと笑い、沖田の下着を押し上げる膨らみに手を添えた。
「心配すんナ。そこも……ちゃんと綺麗にしてあげるアル」
今日の神楽は一体どうしたと言うのか。最高に淫らで最高に卑猥であった。それに沖田は武者震いを起こしそうになると、唾をゆっくり飲み込んだ。
「あ、ああ……しっかりやってくれよ、メス豚みてーにな」
すると神楽は沖田の傷を軽く噛んだ。
「口だけはホント、元気アルナ」
そう言って、沖田の下着を脱がせるのだった。
神楽の手によって、それは綺麗に清拭され、白い手の中で元気にそそり立っていた。
上下に絞りだすように動く神楽の手。ネチャネチャと既に卑猥な音を立てている。
「もういっぱいお汁垂れてるアルナ。そんなに溜まってたアルカ?」
それに沖田は返事をする事が出来ない。口を開ければ声が漏れる。そんな情けない姿など神楽に見せたくないのだ。
程よい締め付けと上下の動き。それが身悶えするほどに気持ちが良く、さらにそんな行為を愛しい女がしていると思うと…………それだけで達してしまいそうであった。
「気持ちいいアルカ?」
うんうん、と頷いてやると神楽は一旦動きを止めた。そして四つ這いになったかと思えば、神楽の頭が股間へと移動して小さな口が咥え込んだ。普段は土下座をしてもやってくれない。それなのに今日は躊躇うことなくシャブッてくれる。まるで奇跡でも起きたかのように沖田の胸は躍っていた。
「ま、待て……あんま、やるな……」
もう少し神楽の絡みつく舌や柔らかい唇を堪能していたいのだが、堪らない状況に射精してしまいそうなのだ。まだ出したくない、そう思っているのだが体は『さっさと出してしまえ』と叫んでいる。
「あ、おい、で、出る…………」
すると神楽は慌てて口を離し、そのお陰で沖田もどうにか踏みとどまった。だが、もはや出さずに収まることは不可能な程膨れ上がり、神楽が潤んだ瞳で沖田を見ていた。
「……今日だけは特別アル。そう決めて来たから」
神楽はおもむろにチャイナドレスのホックを外すと、下着姿になってしまった。
「何する気でィ? まさかテメー…………」
更に神楽はその下着すらも丁寧に脱いでしまうと、薄暗い部屋に真白い肌が浮かび上がった。早熟な形の良い乳房と括れ、手で隠しているがそれはもう既に沖田を受け入れる準備を始めていた。
神楽はその場で膝立ちをすると、紅く染まる頬を沖田に向けた。恥ずかしそうに伏目がちで……だが、その手は自分の柔らかな胸と下腹部へ伸びる。
「お、お前にしてもらえないアルから……自分でほぐさなきゃダメネ……」
沖田は初めて自分の愛しい女が自分以外の指で犯されている所を目撃した。それが他の野郎であれば許し難いことなのだが、神楽が神楽を犯すのだ。これほどまでに興奮するプレイはなかった。
「あっ、あんま、見るなヨ……んッ、あッ…………」
沖田は先走り汁を垂れ流しながら呆然とその光景を目に焼き付けていた。
「見せてんのはテメーの方だろィ? そこにしゃがんで股開けよ」
神楽は恥ずかしそうではあるが、言われるがままその場にしゃがみ込むと、沖田に股を開いて弄っている所を見せるのだった。
そこはもう既に水分で溢れており、神楽の白い指が沖田を誘うようにうごめく。生唾が止まらない。このまま手に触れる前に絶頂を迎えそうだ。それくらいに刺激の強い光景である。
「もう良いだろ、早く来い、早く」
沖田が辛抱たまらず声をかければ、神楽も熱を帯びた目でこちらへ来る。その呼吸は浅く、興奮が沖田にも伝わってくる。
神楽は沖田の腹に跨ると、どこから持ってきたのか沖田の顔にアイマスクを装着させた。
「お、おい」
「見られるの嫌ネ……恥ずかしいアル」
沖田は両手をついて座っているのでやっとだ。アイマスクを取ろうとすればバランスを崩してしまうだろう。
しかし、先ほどあんなにも大胆に股を開いで弄っている所を見せた癖に、今更恥ずかしいとはなんなのか。沖田は神楽にアイマスクを取るようにせがんだ。
「取ってくれ、一生のお願いだ!」
「無理だって言ってんダロ……そ、それよりも……もう……」
沖田の上に跨った神楽は、沖田の熱い塊を手で掴むと自らの中へ誘おうとしていた。
神楽の潤んだ肉が沖田のそそりたつ欲棒に触れる。既にそこは滴っており、早くかき乱してくれと泣いているようだ。
だが、沖田はそれを見たいのだ。今、どんな顔でどんな格好で跨っているのか。はしたないのは重々承知である。それを分かっている上で淫乱な恋人を目に映してしまいたいのだ。
「良いから、取れ!」
沖田がどうにか自分でアイマスクを取ろうとした時だった。バランスを崩し、案の定後ろに倒れてしまった。すると神楽の手が沖田の胸につかれ――――――勢いで擦ずれたアイマスクの向こうに、恍惚の表情を浮かべる神楽が見えたのだった。
根元までずっぷりと飲み込まれた沖田。神楽の熱いカラダに思わず顔が歪む。
「こ、こんな顔、見られたくなかったアル…………」
とろけきった神楽の淫靡な表情。それだけで思わず出てしまいそうになる。だが、沖田は余裕のある表情を浮かべると、汗の滲む顔で言った。
「そう言えば一ヶ月ぶりか?」
「もうっ、動いて、いッ、良い、アルカ?」
神楽は沖田の話よりも今は体に夢中のようであった。沖田は肘をつき、僅かに上半身を起こすと神楽との結合部に釘付けだった。
みっちりと詰まった自分のモノ。それが神楽が動くと搾り取られそうになるのだ。
初めはゆっくりと、しかしその動きは徐々にスピードを上げる。
「あっ、んっ、あッ……痛く、ないアルカ?」
痛みなど今だけは吹っ飛ぶくらいに気持ちが良い。沖田は神楽が跳ねる度に揺れる乳房を見ながら、早くアレを揉みしだきたいと堪らない気持ちになった。すると、神楽の手が沖田の手へと伸び、招待したのだ。
「ここ? 触りたいんデショ? いいアルヨ、総悟」
神楽の胸に押し付けられた手は、あまり力が入らないながらも柔らかな胸を愛撫した。その動きに神楽も唇から涎を零すと、息を荒げながら更に激しく腰を振った。
いやらしく淫らな腰使い。細くて折れそうな癖に、やたらしなやかである。
「グリグリってして良いネ?」
「……好きにしろ」
神楽は嬉しそうに頬を緩めると、沖田と手を繋ぎ、腰を回すように動かした。その動きと繋がる手と言ったら、沖田の前立腺をこれでもかと刺激する。
「あー……ああ、待て、ヤバい……」
沖田も焦る。こんなにも自分の彼女が淫らであるとは知らなかったのだ。しかし、それが快感として体へ『逝け』と命令を下す。
「か、神楽……テメー、もう少し……ゆっくり…………」
「で、でも、無理ネ。腰止まんないアルっ!」
神楽が沖田を激しく攻める。女に乗られて喘ぐような男ではないのだが、この時ばかりは初めて波に飲み込まれた。はち切れそうなほど神楽の中で膨れ上がる性器。このまま絞られ続ければひとたまりもない。
「ひッ、あ、そうご、イく、イっちゃうアル!」
結合部からは白い泡が流れ、粘着質な音が聞こえる。今にも何かを吹き出さんとしている。沖田も意識が飛び始め…………もう、きっと爆発は間近だ。
神楽が髪を乱しながら、膣を震わせると固く目を閉じた。それと同時に沖田も全てを吸い上げられると、神楽の中で果てたのだった。
すっかり身支度を整えた神楽は、横たわる沖田の体に布団をかけると照れくさそうに笑った。
「じゃあ、また明日来るネ」
だが、沖田は神楽を帰したくないと思っていた。いつもなら素直になることもなく、思っている事があっても言葉に出して伝えたりはしない。だが、今日だけは弱気になっているのか、それとも神楽が全てをさらけ出してくれたからなのか、沖田は胸に留まる熱い気持ちを口にしたいと思っていた。
「神楽」
布団に横たわったまま沖田が最愛の女の名前を出せば、傍らに座っている神楽が見つめ返した。
「何アルカ? あっ、もしかして弱気になってるんじゃないだろーナ!」
神楽はそう言って横たわる沖田を覗き込んだ。
青く澄んだ大きな瞳。どうやらそれに沖田の胸の内はすっかりと明かされてしまったようだ。
「…………かもな」
神楽から顔を逸らすと沖田は何もない空間を見て言った。今までこんなにもすがりたいと思った事はないのだ。格好悪く映るかもしれない。それでもいいと思えた。
今夜だけは側にいてくれ。沖田はその一言を伝えたいと、もう一度だけ神楽の顔を見た。
心配そうにこちらを見つめる美しい顔はどこか不安げである。神楽をこんな顔にしてしまった事に沖田は責任を感じていた。
「テメーの泣き顔拝むなんて、一生無えと思ってた」
すると神楽は寂しそうに笑った。
「まだ泣いてないダロ」
沖田は少し力を取り戻した手をゆっくり神楽へ伸ばすと頬に触れた。
「ってことは、もうじき泣くんだろ?」
「かもナ」
そう言って神楽は一粒の涙を零すと、沖田の手に生温い雫があたった。
「…………ちゅう、しようぜ」
その言葉に神楽は泣きながら笑うと、手の甲で涙を拭った。
「しても良いけど、早く治せヨ!」
「そら、テメーのキス次第でさァ」
ゆっくりと神楽は沖田へ顔を近づけた。二人の息が合わさって、そして一つに重なる。軽めだが甘い口付け。神楽はすぐに唇を離すと沖田を優しく見つめた。
「あんまりすると……またお前、元気になるダロ? もうおしまい」
「なんだよ、さっき自分で言ったじゃねーか。早く元気になれって」
神楽はそう言う意味じゃないと怒るも、沖田の側から離れなかった。
「下半身ばっかり元気になってないで、ちゃんと『ここ』も元気になるアル」
そう言って沖田の隣に横たわった神楽は、沖田の胸の中心を指で小突いた。
しかし、神楽が今夜こうして隣にいてくれるだけで沖田は十分回復出来るのだ。
「テメーがもう一回、ちゅうしてくれりゃ……一発でィ」
狭い布団で夜を迎える二人。だが、沖田はまだこの時知らなかった。神楽の寝相の悪さに怪我をした足をピンポイントに蹴られるなど……
それを予測できないほど疲れきっている沖田は、神楽の匂いに包まれて目を閉じるのだった。
2015/07/17
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